国内のドローン関連銘柄5選:インフラ・物流・防災で注目すべき企業リスト

ミライト・ワン

ドローン技術の進化は留まるところを知らず、物流、インフラ点検、農業、測量、防災、そしてエンターテイメントに至るまで、あらゆる産業に変革の波をもたらしています。

日本では少子高齢化に伴う労働力不足の深刻化、自然災害への対策強化、インフラの老朽化といった社会課題を背景に、ドローン活用への期待は急速に高まっています。政府による規制緩和も進み、「空の産業革命」とも称されるこの領域は、まさに成長前夜の様相を呈していると言えるでしょう。

こうした状況下で、独自の技術力や革新的なサービスモデルを武器に、国内市場はもちろん、世界市場をも見据えて飛躍しようとする日本企業が次々と登場しています。精密な制御技術、過酷な環境下での運用ノウハウ、特定分野に特化したソリューション開発力など、日本の「ものづくり」精神を受け継ぐ企業群の動向は、今、最も注目すべきトピックの一つです。

本記事では、ドローン市場の成長性や技術革新に関心を持ち、自社の事業課題解決や新規事業開発、あるいは有望な投資対象として情報収集を行っているビジネスパーソンの皆様に向けて、国内ドローン業界をリードする主要企業を厳選してご紹介します。

ACSL:国内唯一のドローン専業上場企業

ACSL(旧:株式会社自律制御システム研究所)は、千葉大学発のベンチャーとして2013年に設立され、ドローン専業メーカーとしては国内唯一の上場企業です。

ACSLの最大の強みは、独自開発の自律制御技術とセキュリティへの注力です。特に、GPSが届かない屋内や橋梁下などでも自律飛行を可能にする「Visual SLAM」技術は、他社との大きな差別化要因となっています。

物流・郵便(日本郵便との共同開発や実証実験)、インフラ点検(トンネル、橋梁下など)、防災・災害対応を重点分野と定め、パートナー企業との連携を通じて具体的なソリューションを提供し、ドローンの実社会での活用(社会実装)を進めています。

特に日本郵便との連携によるLevel 3.5飛行や、災害時の物資輸送などで実績を上げています。

国産技術とセキュリティの高さを武器に、政府調達や重要インフラ分野への展開を目指しつつ、米国子会社を通じてグローバル市場への進出も図っています。

ヤマハ発動機:ヘリとドローンの「二刀流」で農業の未来を切り拓く

ヤマハ発動機株式会社は、30年以上の歴史を持つ産業用無人ヘリコプターの世界的リーダーであり、その実績と農業分野での高いブランド認知度を活かして、近年、農業用マルチローター(農業用ドローン)市場にも注力しています。

同社の無人航空機事業は二本柱で構成されます。

一つは、世界的リーダーとして知られる産業用無人ヘリコプター「FAZER」シリーズです。大規模農地での効率的な農薬散布を主用途としながらも、測量、インフラ点検、災害時の物資輸送など、多用途化(マルチソリューション)も進められています。

もう一つが、2018年に参入した農業用ドローン市場向けの「YMR」シリーズです。最新モデル「YMR-II」は、中山間地域や小規模圃場での農薬散布、施肥、播種をターゲットとし、無人ヘリで培った高い散布技術と、自動飛行・自動離着陸といった自動化技術を搭載しています。

ヤマハ発動機の強みは、この無人ヘリとドローンの「二刀流」により、大規模農家から小規模農家まで、多様な農業現場のニーズに対応できる点にあります。さらに、日本の農業が抱える労働力不足や高齢化といった課題に対し、自動化技術による省力化・効率化で貢献することを目指しています。

IHI:重工の知見で点検・保守サービスを深化

総合重工業メーカーのIHIは、その広範な事業領域と技術力を背景に、ドローンを「ツール」として活用し、特にインフラの点検・保守サービスの高度化・効率化に注力しています。

空中ドローンの本体製造ではなく、サービス提供と特定のコア技術開発に重点を置いているのが特徴です。

ドローンを活用したサービスは、主に子会社のIHI検査計測(IIC)が担っています。火力発電所のボイラー内部や橋梁、プラントなど、人がアクセス困難な場所の点検・検査を、計画から報告書作成まで一貫して提供。さらに、AIを用いた画像診断サービスや専用ソフトウェアを開発・活用し、点検データの付加価値を高めています。

一方、IHI本体では長年培ってきた技術を活かし、自律型水中航走体(AUV、水中ドローン)の開発にも戦略的に取り組んでいます。これは、成長が期待される洋上風力発電設備の保守や海底資源調査など、将来の海洋市場を見据えた重要な技術開発であり、空中ドローン市場とは異なる独自のポジションを築こうとしています。

現時点でのドローン関連事業の売上規模は大きくないものの、インフラ維持管理の効率化や新たな海洋ビジネスの創出に向けた戦略的な重要性は非常に高いと言えます。

NTTグループ:通信インフラを核としたドローンプラットフォーム

NTTグループ(日本電信電話)は強力な通信インフラとITソリューション能力を活かし、ドローン市場において独自のポジションを築いています。

NTTグループの戦略はドローン本体の製造ではなく、LTE/5Gといった自社の通信網やクラウド基盤を活用したプラットフォームやソリューションの提供に重点を置いている点に特徴があります。

例えば、NTTコミュニケーションズやドコモは、Skydio社などのパートナー製ドローンと連携し、LTE/5Gネットワーク上でのドローンの遠隔制御、リアルタイム映像伝送、自動巡回などを可能にする「docomo sky」プラットフォームや関連ソリューションを提供しています。これにより、インフラ点検の効率化・安全化や、物流分野での実証実験などを進めています。

また、NTTデータは、災害発生時に多数のドローンを自律飛行させ、被災状況を迅速に把握するソリューションを提供。収集データは防災プラットフォームと連携し、迅速な意思決定を支援します。

自社の通信インフラ、クラウド、システム構築力といった強みを組み合わせることで、ドローンエコシステム全体の発展を支える「イネーブラー」としての役割を目指しています。

NTTグループの方向性について詳しくは「NTTとNTTデータが海外事業統合へ!その「紛らわしい」経緯を解説」でも解説しています。

ミライト・ワン:ドローンで建設・保守の効率化と安全向上へ

大手総合エンジニアリング&サービス会社のミライト・ワンは、通信インフラ建設・保守という中核事業で培った豊富な経験と技術力を活かし、ドローン関連事業を展開しています。

ドローン事業は主に2020年設立の子会社「株式会社ミラテクドローン」が担い、ドローンを既存事業強化のための有効なツールと位置づけています。

ミラテクドローンの事業は、「ドローン販売」「ドローン運航サービス」「ドローンスクール」の3本柱で構成されています。

特に運航サービスでは、親会社の事業領域と密接に関連するインフラ設備の点検(建物壁面、水管橋など)や建設現場での測量・施工管理(土量管理、BIM/CIM連携)、災害時の状況調査に注力しています。

さらに現場での安定運用を支える独自Wi-Fi技術「DX Wi-Fi®」や、取得データから3D点群を自動生成するシステム、測量精度を高めるARマーカー技術などを導入。ACSLやSkydioなど国内外メーカーのドローンを活用しつつ、先進技術を積極的に取り入れて、サービスの質を高めています。

ミライト・ワンのドローン戦略は、ドローン事業単体での収益追求よりも、主力のインフラ建設・保守業務における効率性、安全性、データ品質を高め、顧客への提供価値を向上させることに主眼があります。